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COME AND GET IT

最高ランクを取るのが難しい音ゲーはどれ?(その5)

目次

  1. 問題提起
  2. プレイヤーモデル
  3. 判定幅の時間単位
  4. 各機種のランク判定システム
  5. 計算方法と結果 ←イマココ

5. 計算方法と結果

 計算手順

ようやく下準備が整ったので、計算していきます。

今回はノート数を一律500として計算します。理論的にはDDR以外は結果がノート数に左右されないのですが、各判定数の小数点以下を丸めるとノート数によって多少ズレが生じるので、ここで定義しておきます。同じノート数でも機種によって難易度差があると思いますが、そこは2章で定義したとおり、考慮しません。

さてこのとき、

入力タイミングの精度σ=○○では、
IIDXでPGREATを出す確率はxx%、GREATを出す確率はyy%、
pop'nでCOOLを出す確率は…

と全ての機種で各判定の確率を正規分布曲線から求め、これにノート数を掛けて、各機種の獲得判定数を算出します。更にその獲得判定数を元にスコアを計算し、結果、σに対する各機種のランクを得ることができます。

例えば、σ=20のとき、IIDXでは

判定 取得確率 取得判定数 EX SCORE
PGREAT 68.27% 341 682
GREAT 27.18% 136 136
GOOD 4.55% 23 0
BAD 0.000015% 0 0
POOR 0.0000000000064% 0 0
合計 100% 500 818

と計算され、このとき得点率は
 得点率=818 / (500×2) =81.8%
となるので、取得ランクは「AA」となります。

同様にしてこれをσ=●●の場合、σ=□□の場合、…と計算していき、そうして得られた各機種のσとランクの関係をプロットしたものが下のグラフになります。このグラフは、σを横軸、ランクを縦軸に取っていて、右に行くほど精度が良く、上に行くほどランクが高いです。

bemani_sigma-rank
(サムネイルをクリックして原寸画像をご覧ください)

どの機種が最高ランクを取るのが難しいのか?

基本的にはこのグラフが今回のアウトプットの全てなのですが、
とりあえず、記事タイトルの件について結果を示しておくと…

最高ランクを取る難しさは、
(難) jbt(HARD)<DDRIIDX<dm<RB<GF
  <pop'n(旧)<SDVX<ダガッキ=(DEA)<jbt<pop'n<BS (易)

という結果になりました。
(第二ランク→最高ランクへ上がる線を左から拾っていくと、易しい順になります)

もうちょっと分析を…

これだけではさすがに味気ないので、もう少し詳しく見てみます。

下記の表は、10≦σ≦30の範囲で、前後でランク変化があったσの値を、σの値が小さい(=精度が良い)順に並べてみたものです。つまり、第二ランク以下も含めた、ランクの取りにくさを上から順に並べたことになります。やっていることは、グラフを右から順に読み取るのと同じことなのですが、グラフが読み取りにくいと感じた場合は、こちらもご参考ください。

σ 機種 ランク
11.7 jbt(HARD) SSS
12.4 IIDX (MAX-)
12.5 DDR AAA
12.7 jbt EXCELLENT
15.1 pop'n(旧) 95,000
15.5 jbt(HARD) SS
15.9 IIDX AAA
17.1 dm SS
17.2 RB AAA+
17.8 pop'n 95,000
17.9 DDR AA
19.0 GF SS
19.2 pop'n(旧) 90,000
21.2 jbt(HARD) S
21.6 SDVX AAA
22.3 IIDX AA
22.6 DDR A
22.7 ダガッキ AAA☆
  (DEA) AAA 
22.8 RB AAA
23.5 jbt SSS
23.9 pop'n 90,000
26.8 pop'n(旧) 80,000
26.9 jbt(HARD) A
27.4 BS AAA 
29.2  dm S
29.3  IIDX A 
29.9 SDVX AA 

さて、ここからは個人的に気になったことをいくつかコメントします。

jubeatのHARDモードは本当に難しい

IIDXのMAX-とDDRのAAA(とjubeatのEXC)がほぼ同格としてトップクラスに位置していますが、jubeat(HARD)のSSSはそれらより更に一歩上にあります。IIDXと同じくらい厳しい判定幅と、シャッターボーナス抜きで得点率約97.8%という高いランクボーダーの相乗効果により、得点配分が甘いにも関わらず非常にシビアな到達度となっています。SS以下の位置にも要注目で、SSはIIDXのAAAより難しく、SはSDVXのAAAより難しく、第四ランクのAですら他機種の最高ランク(BSのAAA)より上に位置しています。

更に、キー音の類が無いために自分の入力タイミングのフィードバックが弱いこと、(個人的には)譜面が縦に流れる他機種よりも目押しがしにくいことも含めると、実難易度は更に高いと言えるかもしれません。(もしかしたら、これらの要素も含めて「IIDXと同レベル」と評されているのかもしれませんが)

 DDRもかなりシビア

 jubeat(HARD) SSSには劣りますが、DDRのAAAも到達度としては非常にシビアな設定です。PERFECT=MARVELOUS-10点 なので、PERFECTも実質ほぼ最上位判定と見なしてもよく、そのため判定幅自体はそこまで厳しいとは言えません。しかし、ランクボーダーが得点率99%と恐ろしく高く、これがAAA難易度をこの高みまで押し上げている最大の要因と言えます。

しかも、入力は足で行うため、他機種と同等の精度が簡単には出せないのではないかと思うと、実際は更に難易度が高いと考えるべきかもしれません。MARVELOUS幅±15ミリ秒というのは信じがたい、というのが正直な感想です。

「指はエクセゲー」と言われるが…

jubeatは他機種に比べ理論値を出しやすい音ゲーとして知られ、全曲EXCELLENT達成者も出ているため、しばしば見出しのような言葉で揶揄されますが、 IIDXのMAX-と同格と考えると、個人的には十分に厳しいと思います。先述したとおり、jubeatの入力インターフェースが精度を出しにくいものであることも考慮すると尚更です。

GFが過小評価されてしまった

GFはdmと比較してSS難易度がかなり低めに出ましたが、これは今回の「入力の難しさは考慮しない」という仮定の被害をかなり受けてしまったかな、と感じます。

GFの入力はご存知の通り、

  1. 予めネック側で正しい組み合わせのボタンを押す
  2. 正しいタイミングでレバーをピックする

という2つのステップから成り立っているので、「正しく演奏する」までのハードルが他機種よりも非常に高いです。さらに、難易度が高い譜面になると、「ネック側もノートとノートの間のわずかなタイミングで押さえるボタンを変える」という要素も出てくるため、入力のハードルは更に上がります。「ミスなく演奏する」という仮定のスタートラインに立つことが他機種よりも難しく、加えて、そのミス要素がコンボ点というスコアの一部にも関わるため、この「ミスを出さない難しさ」が評価されないと、多機種と比べても特に過小評価されてしまうゲーム性だな、と思いました。

 GFがdmに比べて判定幅が広く、GREATの得点配分が高いのは、こういった難しさを加味してdmとの難易度(スキルポイントの稼ぎやすさ)のバランスを取るための配慮でもあるのかな、と思いました。

 ***

あと2つだけ、特集をさせてください。

pop'nラピストリアでの易化について

前章で触れたとおり、ラピストリアにて得点配分が変わったpop'nですが、どれくらいスコアを取りやすくなったのかを比較するため、精度σを横軸に、スコアを縦軸に取り、ラピストリアとSunny Park以前の値をプロットしてみました。(下図)

f:id:yonexun:20141218201409p:plain

精度が悪くなるほど(グラフ左側)、得点配分が変更された下位判定の取得率が上がるため、新旧のスコア差が広がっていきます。代表的な旧スコアを新スコアに換算すると、おおよそ以下のようになります。

SP ラピス
95,000 97,000
90,000 93,900
85,000 90,800
80,000 87,500
75,000 84,300
70,000 80,900

各機種の最高ランクをIIDXの得点率に換算すると?

最後に、僕はIIDXをメインでやっているので、やはり「IIDXで言うとこれくらい」があると 嬉しいと思い、換算表を作ってみました。他機種メインの方には申し訳ないですが、何らかの参考になればと思います。

機種(ランク) IIDX得点率
jbt(HARD) (SSS) 95.6%
IIDX (MAX-) 94.4%
DDR (AAA) 94.4%
IIDX (AAA) 88.9%
dm (SS) 86.9%
RB (AAA+) 86.8%
GF (SS) 83.6%
pop'n(旧) (90,000) 83.2%
SDVX (AAA) 79.1%
IIDX (AA) 77.8%
ダガッキ (AAA☆) 77.2%
jbt (SSS) 75.9%
pop'n (90,000) 75.2%
BS (AAA) 69.5%

 

おわりに

今回の考察によって、BEMANIシリーズの機種についてひとつの格付けをしてしまったわけですが、先述したように、この結果はあくまで乱暴な仮定と、不確かな数値を基にした計算の上に成り立っているものであり、非常に限定された条件の中で比較されたです。この結果を鵜呑みにし、特定の機種やそのプレイヤーを見下す材料などに使うことのないよう、切に願います。「あの人のリザルトはこれくらいすごいんだ!」と、ポジティブな話をするためのネタとして利用していただけると幸いです。

また、今回は時間の関係で対象をBEMANIシリーズに絞りましたが、これは現在アーケードで出ているような音ゲーであれば概ねどの機種でも適用できる、拡張性のある内容になっているかと思います(やはり判定幅がわからないという問題はつきまといますが…)。もし興味があれば、計算して今回の結果と突き合わせてみるのもよいでしょう。僕もそのうちやるかもしれません。

いちおう、僕が計算に使ったシートを共有しておきます。正直言って他人が一目見てわかるほど整理されているとは言えず、整理して内容を説明するところまではエネルギーが回りませんでしたが、どなたかの参考になればと思います。

最高ランクを取るのが難しい音ゲーはどれ?計算シート - Google スプレッドシート

 

最後に、このネタについて執筆するきっかけを与えてくれた@wand07さんに深く感謝いたします。なかなかボリュームが大きくなってしまいましたし、こうやって公開日時を先に宣言しておかないと、書き切って公開するところまではとてもたどり着けなかったと思います。ありがとうございました。

 

参考:

BEMANIWiki 2nd (スコア計算式、ランク判定システム全般)

おしゃべりな部屋 (プラネタリウム,星,植物,熱帯魚,統計学) (正規分布の適合度検定方法)